ことの顛末を聞くと、嘆息するしかない事件である。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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いったい誰にそそのかされたのか。浙江省で二人の男が大スズメバチに襲われ、うち一人が死亡するという事件が起きた。スズメバチに襲われるという被害は、日本でも珍しくない。とくに晩夏から秋にかけては最も警戒すべき時期だ。このことは中国も同じである。
しかし、今回のケースは少し一般の被害とは事情が異なっている。というのも二人の被害者は自ら進んで大スズメバチの巣に近づいたというのだ。いったいなぜそんな無謀な冒険に向かったのか。
「精力剤のためですよ」
と語るのは北京のメディア関係者だ。
「新鮮なスズメバチの幼虫は何よりも精力剤だという話を耳にした、今年52歳の石さんと会社の同僚で30歳の後輩が、退社後にスズメバチの巣を探して山に入ったのです」
夜8時に退社した二人は、山に入って間もなくスズメバチの巣を見つけた。そこで近くにあった枝を使って簡単に巣を落とすことに成功した。
そして二人は、その場で幼虫を夢中になって口に放り込み始めた。
しかし、相手は獰猛で知られる大スズメバチである。瞬く間に彼らは取り囲まれて徹底的に刺されたという。
スズメバチによるあまりに激しい攻撃に、二人はそれ以上幼虫を食べることを諦めて下山。その日は大人しく寝たというのだが、朝になると刺された個所からの痛みが激しさを増し、耐えられないほどになった。そこで二人はそろって病院に向かったのだが、治療を始めて間もなく、若い後輩の容体が急変。あっという間に死んでしまった。刺されてから12時間後のことだ。
同じく石さんの病状も悪化し、心拍数がわずか35という危機的状況に陥ったためICUに入れられた。現地の医師によれば、スズメバチによる被害は毎年同病院でも二、三例が報告されているというが、「今回のような動機というのは初めてだ」と驚いたという。