神戸は新しい街である。かつて、何らかの点で東京を上まわったという歴史的な実績はない。もちろん、東京においこされたという記憶も、街にいきづいてはこなかった。
だから、神戸が東京におよばないことをなげく心性は、めばえにくい。東京へ敵愾心をいだく度合いも、京都や大阪ほどには強くないと考える。
●いのうえ・しょういち/1955年京都府生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。同大学院修士課程修了。建築史、意匠論が専門。『関西人の正体』『つくられた桂離宮神話』『美人論』『南蛮幻想』『京都ぎらい』など著書多数。
※SAPIO2018年9・10月号