史上初となる全域停電、「ブラックアウト」を引き起こした、9月6日の北海道大地震。信号機が止まり、交通は大混乱。携帯電話の充電が切れ、情報収集手段が失われた人も続出した。
なかでも深刻な状態を迎えたのが、「病院」だった。地震発生直後から道内376病院が停電し、うち82病院で断水した。
幸い、非常用発電機は無事に作動し、患者の命に関わる事態は避けられたが、特に手術中の停電は、患者にとっても医師にとっても最大の非常事態だ。胃腸外科医で東北大学災害科学国際研究所の佐々木宏之助教が語る。
「通常は停電後、すぐに非常用発電機による電力供給に切り替わります。もしそれさえ喪失しても、麻酔器や人工呼吸器、モニターなどは個別にバッテリーが付属されているので、止まることはない。
しかし、手術に使用する電気メスは非常用電源を使っていることが多いので、小さな止血などは手で押さえるなどの代替手段を取ることになる。
例えば腹腔鏡手術の際にブラックアウトが起きたとすると、先端部のメスが稼働しなくなるので、患者の体内から引き抜いて、手術を中断することになるでしょう。私自身、全身麻酔下の手術中の停電は緊張が走ります」
手術室では影ができにくい無影灯で患部を照らすが、非常用発電機が落ちれば手術室内照明とともに無影灯も消える。