働き方関連法が成立し、いよいよ改革が本格化しようとしている。しかし一部には改革が大きく進展した企業がみられるものの、大半がまだ効率的な働き方の方法や方向性を模索している状態である。そこで先日、米シリコンバレーの企業現場を視察してきたという同志社大学政策学部教授の太田肇氏が、究極の働き方改革に迫った。
* * *
先日、グーグル、アップル、アマゾン、アドビなど代表的なIT企業が集積するシリコンバレーを訪ね、それらの企業現場を観察し、またそこで働いている人たちに会って話を聞くなどの調査をした。
いずれの企業も働き方やマネジメントには共通点が多く、日本の「働き方改革」を進めるうえで参考になる点があるので紹介しよう。
これらの企業でいちばん印象的なのは、すべてが「仕事」にフォーカスしていることだ。仕事をしっかりとこなし、成果をあげている限り働き方は問わないという割り切りがある。
そこが出発点になっているので軸がぶれないし、いろいろな働き方のバリエーションが出てくる。逆に、制約があっても仕事上必要だと分かれば納得ができる。なぜだか分からない細かいルールや規制が多い日本企業とは対照的だ。
なお「仕事」にフォーカスしているという点は、程度の差はあれ欧米や中国などの一流企業に共通する特徴である。昼間でも社内でゲームをしたりジムで汗を流したりする人がいるし、カフェで仕事をしている人もいる。
某有名企業の一社員は、週に2日だけ会社に出勤し、あとの3日は自宅で働いているという。また、ある日本人の女性社員は毎年、1か月間は日本の実家に帰り、そのうち3週間はリモートで会社の仕事をしていると語っていた。
どこの会社でも「仕事さえこなせばよい」という原則が徹底されているので、勤務時間は定められていても一応の目安にすぎない。
たとえば、日本ならちょっと買い物などで用を足したり、歯医者に行ったりするときは半日休か時間休を取らなければならないが、こちらでは1~2時間くらい職場を離れても問題はない。会社によっては、幼児を職場に連れてきて仕事をする人もいるという。
日本でも、仮にこのような働き方ができれば出産を機に辞める女性は減るだろうし、まとまった休暇も取りやすくなるだろう。不測の事態に備えて有給休暇を残しておく必要もなくなるからだ。