さだまさしがラジオのDJスタイルで軽妙なトークを展開する『今夜も生でさだまさし』(NHK総合、通称『生さだ』)。視聴者がハガキで寄せる質問や悩みに対して、さだが豊富な知識と経験を生かしながら、台本なしで答える深夜の生放送番組だ。さだの素顔を探る短期集中連載の第2回は、『生さだ』プロデューサーの飯塚英寿氏と、番組でさだの隣に座る構成作家の井上知幸氏の対談を紹介。ぶっつけ本番の人気番組の舞台裏とは?
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飯塚:さださんとは1991年の『紅白歌合戦』の楽屋で話した記憶があってそれ以来のお付き合いです。その前はちょっと覚えてない(笑)。さださん、新しい番組企画に興味がある方なんで、「なんか面白いことやろうよ」といろんなネタを持ってきてくれる。で、いよいよ番組を立ち上げようということになって……。
井上:さださん行きつけのホテルのバーに呼び出されたんです。飯塚さんから「企画があるから来ないか」と。さださんと面識はありましたが、きちんと話したことはありません。滅多にテレビに出ない人でしたし、演出家と大ゲンカして『紅白歌合戦』を降りたという話を耳にしていたので、僕の中では“怖い人”というイメージ。実は行く前からビクビクしていて、内心、嫌でした(笑)。ところが会ってみたら、気さくで冗談ばかり。まったくふざけた方でした。
飯塚:それで3人で毎週のように会って話すようになりました。私は当時主流の「作り物」が嫌で、そうじゃない番組を作りたかったんですが、その流れで、「どこかへ行きたいですね」となった。そしたらさださんが「そういえば頼まれて岐阜の谷汲村(たにぐみむら)ってとこの村の歌を作ったけれど、一度も行ったことがない」と。「無責任ですね~」と返しながら、「じゃあそこに行ってみましょう」ということになった。
井上:その時のさださんが、「旅番組は多いけれど必ず行く前からカメラが待ち構えている。それはおかしい」「約束事のない旅番組をやってみたい」と言う。これに飯塚さんも僕も食い付いたんです。当時は誰もやっていなかった。