グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
フリーアナウンサーの露木茂氏(77)が持ってきたのは、56年間大切にしているカメラカメラ「ライカIIIf」だった──。
「私より長生きするでしょうね、このカメラは。シャッターはたまにしか押さないけど現役です」
1950年代製の「ライカIIIf」ほか、数台のビンテージカメラを所有する露木氏。カメラ好きは小学生からで、中・高校時代には報道カメラマンを夢見たほど。
その志は目が悪くなったので諦めたが、仕事は撮る側から撮られる側のアナウンサーとなり、定年まで勤め上げた。途中、フリー転身の誘いもあったが、会社の看板を背負って務めを果たした生き方に後悔はないと語る。
退職後はフリーで活動しながら、合唱団でコーラスをしたり、大学時代の仲間と結成したハワイアンバンドでライブを行なうなど、充実した日々を送る。
「寂しいのはどんどん仲間が逝ってしまうこと。無人島で足元にひたひたと海水が押し寄せて、砂浜が狭まるような感じかな。今は開き直って年齢を受け入れ、残りの人生を大事に生きようと思っています。まずは、元気なうちに夫婦で旅行に行きたいね」
【プロフィール】つゆき・しげる/1940年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、フジテレビ入社。『小川宏ショー』『報道2001』『FNS歌謡祭』など、数多くの報道、バラエティ番組で活躍。現在はフリーアナウンサーとなり、司会、講演活動を多数行なう
◆撮影/渡辺達生、取材・文/スペースリーブ
◆小学館が運営する『サライ写真館』では、写真家・渡辺達生氏があなたを撮影します。詳細は公式サイトhttps://serai.jp/seraiphoto/まで。
※週刊ポスト2018年10月5日号