約2年にわたって『女性セブン』に掲載された人気連載「松田美智子の旬菜食堂」が一冊の本になった。丁寧な下ごしらえや、計算し尽くされた調味の手順など、「一生おいしい」レシピは、家庭料理の“最旬・最新”スタンダードだ。
素材の性質、調味料の役割を知って、基本的な“料理の科学(決まりごと)”を守って調理すれば、おいしい一皿が出来上がる。その礎になるのが丁寧な支度(下ごしらえ)…というのが松田美智子さんの信条。
小学生の頃から、“実験”と称して食材と料理の“方程式”づくりに余念がなかった松田さんの無類の好奇心と行動力は、今も変わらない。方程式を基に松田さんの料理はつねに進化しつつも無理がない。調味料もシンプルだ。
女性セブンでの連載記事は、料理ページとしては珍しいモノクロページにプロセス写真を大きく掲載するという構成だった。出来上がり写真は添える程度だったが、これが好評を博し、「カラー写真で見たい」という多くの声に応えるべく、今回、全料理カラーでの収録となった。
本書には、素材の持ち味を生かした旬のレシピから、すぐに出せるおつまみや副菜、そして、現在進行形で“研究中”の脳活レシピまで、脳と体が喜ぶ「おいしい」が詰まっている。
「調理の手順を計算し、丁寧に下ごしらえをすることで素材のうまみが引き出され、あれこれ調味料を入れなくても、味がなじんでおいしくなります。切り方やゆで方、あるいは保存のひと手間が美しい仕上がりと深い味わいにつながるのです」(松田さん)
たとえばピーマンは、天地を切り落とし、種とわた、そして白い筋も丁寧に切り取って、平たい長方形にしてから幅を揃えて切る。そうするとピーマン特有のにおいが抜け、まんべんなく火が通る。きのこ類は、香りを生かすために水で洗わず、汚れを拭き取って手で裂く。ブロッコリーやカリフラワーも、できるだけ手で切り分ける。繊細な旬の野菜は、金物に触れると劣化するからだ。
皮がやわらかい旬の里いもは、よく汚れとひげを取ってオリーブオイルを絡めてグリル。香ばしい皮ごと味わう絶品だ。
そんな知恵と丁寧な手仕事が、味わい深い仕上がりを生むのだ。
「食は命を紡ぐもの。つねに心身がシャキッと動くためのお料理に労を惜しまないことです。いい加減なものを食べては、人生がもったいないですから」(松田さん)
時短ブームの今だからこそ、決して難しくない「丁寧」――家庭料理の新スタンダードです。
■『ピーマンのきんぴら』の作り方
【1】ピーマン10個はヘタとお尻部分をカットし、種とわた部分をそぎ取り、幅と長さを揃えて縦にせん切りにする。
【2】フライパンにオリーブオイル大さじ1を熱して【1】を入れ、中強火で炒める。
【3】ピーマンがしんなりしたら三温糖大さじ1を加えて照りが出るまで炒め、酒大さじ3を入れて炒り煮する。
【4】水分がなくなってきたらしょうゆ大さじ1を加え、水分が飛ぶまでさらに炒める。
【5】器に盛り、白ごまをふる。
<プロフィール>
料理研究家・松田美智子さん/1993年から「松田美智子料理教室」を主宰。季節の素材そのものの味を大切にした料理には定評がある。
『丁寧なのに簡単な季節のごはん』
連載からの選りすぐりレシピと、連載未収録レシピの計90品を収録。美しくおいしい手仕事も満載/本体1300円+税/小学館
※女性セブン2018年10月11日号