中国の電子商取引最大手アリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長は、ドナルド・トランプ米大統領に表明した米国での雇用創出計画に関し、米中貿易摩擦の影響で「もはや約束を果たすことはできない」ことを明らかにした。中国国営新華社通信が馬氏との単独インタビューの内容として伝えた。馬氏が米大統領に語った約束を「反古」にするのは極めて異例だが、馬氏が中国共産党指導部からの働きかけに応じたとの見方が強まっている。
馬氏は昨年1月、ニューヨークのトランプタワーに乗り込み、大統領就任前のトランプ氏と会談し、「米国内でアリババグループのサービスを拡大し、5年間で100万人の雇用につなげたい」との計画を明らかにしていた。これに対して、トランプ氏は会談後、馬氏を見送るためにエレベーターに同乗して1階ロビーまで同行し、記者団を前に即席の記者会見を行うなど上機嫌だった。
トランプ氏と馬氏の会見をセッティングしたのが、トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏(現米大統領上級顧問)と伝えられていた。
ところが、馬氏は9月18日、中国浙江省杭州市のアリババグループの本社で、新華社と単独会見し、100万人雇用計画について、「計画は米中の友好的な協力に基づくものだったが、すでにその前提は壊された」と述べるとともに、「貿易は武器ではなく、平和を推進するものであるべきだ」と主張し、対中制裁を強めるトランプ氏を痛烈に批判した。
さらに、馬氏は翌19日、杭州市で行ったアリババの投資家向け会合で講演し、米中貿易戦争について、「大半の人々が考えるよりも長く続き、影響は大きくなるだろう」との見方を示した。そのうえで、「米中両国が覇権争いをしていることから両国の貿易摩擦はトランプ大統領の任期が終わっても残る。2カ月、2年で解決するものではない。20年続くと考えて備えた方がいい」との予測を明らかにした。