9月30日に放送予定だった回が、台風のため10月7日に延期となったNHK大河ドラマ『西郷どん』。この回は、「江戸無血開城」が描かれる予定だ。今後は年末に向けて数多くの歴史的に重要な出来事が描かれていくが、実は注目シーンがまだあるという。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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そんなわけで、徳川慶喜(松田翔太)による大政奉還、坂本龍馬(小栗旬)暗殺、鳥羽伏見の戦いと、幕末の大事件、ドラマの見せ場が続く大河ドラマ『西郷どん』。薩摩や奄美大島で暮らした心優しき男・西郷が突如「戦の鬼」になってしもうて(つい、こんな言葉遣いになってしまう)びっくりである。
個人的には、「慶喜の首をとる!!」「江戸総攻撃!!」と勢いづく西郷吉之助(鈴木亮平)に面会するため、ただひとりで堂々と敵陣に乗り込んだ旧幕府側の交渉人・山岡鉄舟(藤本隆宏)の破天荒ぶりをもうちょっと見たかったという気がするが、この鉄舟も含めて、旧幕府軍をビビらせた「錦の御旗」や篤姫(北川景子)も登場させるなど、ドラマの切り札を次々切ってきたなと思える。
しかし、このドラマには「最後の切り札」が残っていることを忘れちゃいけない。それは、「犬」だ。上野の西郷の銅像が犬を連れていることは有名だが、西郷にとってワンコはとっても重要な存在だ。薩摩の盟友・大久保一蔵(瑛太)におゆう(内田有紀)がいたように、伊藤博文、木戸孝允ら幕末の偉人たちは、祇園で遊ぶのが大好きで、京都に女がいるのは当たり前。しかし、西郷は京都でもどこでも女性よりワンコ優先の生活だったという。
料亭のお座敷にもワンコ同伴でうなぎも分け合い、にこにこ帰宅。かの鳥羽伏見の戦いから始まった戊辰戦争の最中にも、ちょこっと薩摩に帰って、ワンコと温泉に行っていた!? どんだけ犬好きなんですか。
こんなエピソードがわかったのは、長年、犬についての歴史を研究している仁科邦男さんの著書『西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか 西郷どん愛犬史』(草思社)を読んだからだが、明治7年には、なんと13匹もの犬を連れて、指宿の鰻温泉に出かけていた記録があることなど知ると、これはドラマで出てくるのか…出てきたら面白いけど、ここまでの緊張感が一気に吹き飛ぶのではと心配にもなってくる。
維新後の西郷は、明治政府の一員としてよく働く。だが、大久保とも対立し、次第に政府内で孤立。仕事にも出ず、屋敷にこもりがちでどんどんメタボ体形になってしまう。そんな西郷にドイツ人の医師・ホフマンは、散歩を奨めたという。散歩といえば、ワンコ。西郷を救ったのは、犬だったのだ。
そういえば、ドラマの鈴木亮平は、得意のボディ改造でどんどんガッチリ体形を作り上げて、二重あごになり、銅像のイメージに近づきつつある。ワンコ登場も近いはずだ。
西郷は、最後の戦いとなる西南戦争の最中も、犬を連れて兎狩りをしていた。敗北を予感していた西郷の唯一の話し相手は、犬だったとの説もある。鈴木西郷どんが、どんなワンコを連れ、何を話しかけるのか。入浴シーンもアリ? まさか指宿で13匹と砂風呂? 愛犬家には見逃せないシーンになることは間違いない。なかなか出てこない「最後の切り札」に注目したい。