「この前、夫が会社で受けた定期健康診断の結果が届いたんです」。苦笑交じりに語るのは、神奈川県に住む専業主婦の太田美保さん(45才・仮名)だ。
「ちょっとメタボ気味なだけで、他は異常なしだったからホッとしたのもつかの間、ふと『そういえば私、最後に検診を受けたのはいつだっけ』と…。調べてみると、出産を機に会社を辞めた10年前でした。これまで大きな病気にかからなかったからいいけれど、日々の生活に追われて自分の体のことはすっかり忘れていました」
太田さんのように、長期にわたって検診を受けていない女性は多い。厚生労働省が2016年に行った「国民生活基礎調査」によれば、女性の受診率は男性よりも低い。
胃がん検診を例にとると、男性が46.4%受診しているのに対し、女性は35.6%に留まっている。女性がかかりやすいとされる大腸がんの検診率も男性が44.5%に対し、女性は38.5%と、大きく下回っている。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが分析する。
「専業主婦やパートタイマーとして働く女性たちは会社員のように半ば強制的に定期健康診断を受ける機会がない。そのうえ、休日など関係なく押し寄せる家事や育児などに追われているうち、つい後回しにしてしまうという傾向が見られます」
しかし、後回しにした結果、取り返しのつかないことになるケースもある。2017年に乳がんで亡くなった小林麻央さん(享年34)は生前、「半年後に受けること」と言われていた検診を先延ばしにした結果、わきのリンパ節に転移した状態で乳がんが見つかった。
自分のためにも家族のためにも、自主的に検診を受ける必要がある。しかしいざ受けようと人間ドックのパンフレットをめくれば、数多の検診メニューが並んでいて、選ぶのもひと苦労だ。
「それらすべてを受ける必要はありません。『病気の症状が出てきてから受ける検査』と、『異常がなくても定期的に行う検査=検診』は大きく違います。検査は、病気の疑いがあれば基本的にどれでも受けるべきですが、検診の場合は受けることのメリットが、デメリットを上回る場合のみ受けるべきです」(室井さん)
メリットは病気が発見できることや、体の状態を知ることで生活習慣を改善できることが挙げられる。一方、デメリットは、検診によって体に負担がかかったり、誤診によって受ける必要のない治療を受けなければならなくなったりすることがある。