ネットによって犯罪の様式も拡大している。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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よほど大胆な犯罪者か、それとも単なる無知か──。いずれにせよ中国の読者を大いに驚かせたに違いない。
9月4日付『北京晨報』が報じた記事、〈北京の二人の男が裏サイトでハッカー養成講座を開設し御用〉によれば、中国政府が進める「ネット浄化キャンペーン2018」の行動の中で、その監視の網に引っ掛かったという。「ネット浄化キャンペーン2018」は、中国社会にIT化の波が訪れるのに従ってネットに絡む犯罪件数も急増していることを受けた対策である。
そんな折もおり、北京市公安局海淀の網安総隊のアンテナに一つのサイトが目に留まった。
北京に住む張と孫という二人の人物の運営するサイトで、ハッカーを養成しているというものだった。3月から内定に入った総隊は、組織の全貌を見極めた。そして二人の住処がそれぞれ広州市と周口市にあることを確認し、逮捕に至った。
二人は、応募してきた者にハッキング技術の教える見返りとして、毎月の会費199元(約3300円)から488元(約8100円)──会費は習得したい技術の内容によって変わる──を受け取っていた。
いったいこんなことが収入になるのかと疑いたくなるのだが、警察の発表によれば、張と孫が得たのは5年間でおよそ数万元というから、たいしたことはない。少なくとも犯罪に見合ったものではなさそうである。