貂々:退団公演はもちろん、ちぎさん(早霧さんの愛称)は宝塚史上初めて、主演をした大劇場公演全5作で観客動員100%を達成して、チケットが取れない伝説の大スターといわれるご自身を、どうとらえていらしたんですか。
早霧:今日のひと公演、明日のひと公演が、1つの目標なので、あまり考えていられないというか…。動員が100%とか、周りのかたがたに言っていただけたので、喜びはすごくありましたけど、自分としてはそこに重きを置いてなかったです。一つひとつの公演をちゃんとやることに魂をかけて、命以上のものをかけてやっていたので、その積み重ねがそういう形になったことはとてもうれしいですけど、その当時は、それどころじゃないというか、目の前のことで必死でしたね。
貂々:それはやっぱりプレッシャーなんでしょうか。
早霧:100%を目指そうという考えはまったくなかったんですけど、前の作品よりもさらに面白いものを追求しなければいけないというプレッシャーは強かったですね。お客さまの期待値が絶対に上がってるはずなので、それを裏切りたくないっていう。で、もっと楽しいものを、もっと面白いものをと、自分にも要求しているところがあって。貂々さんも作品を描く上で、プレッシャーもあるんじゃないですか?
貂々:えっ、私は何ていうか。気楽に楽しく描いているというか(笑い)。
早霧:本当はそれがいちばんいいですよね。この『お多福来い来い』を拝読していても、そういう抜け感をすごく感じるんです。素朴でかわいいタッチの絵もいいですね。
貂々:ありがとうございます。
早霧:だから、全然押しつけがましくないっていうか。そこが素敵な魅力です。
貂々:今日はもう、ちぎさんに今の言葉をいただけただけで幸せ(笑い)。
※女性セブン2018年10月18日号