中国の金持ちがまさに桁違いであることは広く知られているが、ここまでのエピソードとなるとそうは多くないだろう。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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今年9月末、1 枚の流出写真がネットに出回り、現地の人々を大いに騒がせるという騒動があった。その写真とは、レースのテーブルクロスの上で取られた縦に細長いレシートである。撮影者の影まで映り込む生々しい画像で、流出者の意図もうかがわせた。
レシートの下には合計金額として41万8245元(約694万円)と数字が印字されているのだが、その数字を手書きのペンでちょうど40万元(約664万円)と修正してあるのも生臭い。
つまり、あまりに豪華に消費をしてくれたお客さんに対して「端数はけっこうです」との心づかいをした痕なのである。
では、いったい何に700万円近くも使ったのかといえば、それはたった一度の食事だというから驚きである。結婚式や大人数でのパーティーではない。レシートにある人数のところには「8人」の文字も刻まれている。一人当たり約87万円の食事となれば、話題にならないはずはない。
それにしても気になるのは「よく、このご時世に」という点と、「いったい何を食べれば……」という疑問である。前者については、いま関係者に対する取り調べが始まったばかりなので詳細は不明だ。本稿では食事の中身についてのみ触れておくことにする。
まず、金額の大きさで目につくのはアワビだが、アワビより高額なのが「ワニのしっぽのスープ」である。1万6800元(約27万8000円)。それ以外に高額な料理はほとんどが「野生」モノだ。野生の大黄魚(フウセイ)が1万6920元(約28万円)。野生の大螺(ツブ)が1万3588元(約22万5000円)という具合だ。
それにしても習近平の下で贅沢に対する厳しい風が吹くなかでも、大胆な傾向は変わらないことに驚かされる。