1番・筒香嘉智、2番・ソト──。10月7日の広島対DeNA(マツダスタジアム)のオーダーが発表されると、スタンドはどよめいた。チームはもちろん、侍ジャパンでも4番を務めた筒香がプロ入り初となる1番で起用されたのだ。
ラミレス監督の采配に、ネット上では否定的な意見が多かった。クライマックスシリーズ(以下、CS)進出の可能性を残す中で、広島・丸佳浩と本塁打王争いをしていた筒香とソトに打席を多く回らせるために1番、2番に置いたと脊髄反射された面もあっただろう。
だが、ラミレス監督は決してCSを諦めたわけではなく、狙いは他にあった。自軍の看板選手のホームラン王争いが広島の先発・大瀬良に与えた心理的影響は大きかったのか、初回1番・筒香は四球、2番・ソトは死球で無死1、2塁のチャンスを迎えた。3番・乙坂智のバント失敗による併殺打でチャンスは潰えたが、ラミレス監督の奇策は初回からハマったのである。野球担当記者が話す。
「結局、4対3で勝ったこの日の全打点はソトと筒香によるもの。ソトは3打点、筒香は5打席で4度出塁。1番、2番と大砲が続く打順が相手投手に与えたプレッシャーは計り知れず、『1番・筒香、2番・ソト』のラミレス采配は当たったと言っていいでしょう。
監督はどんな采配をしても、必ず批判は出る。勝っても、ファンは自分の好きな選手が冷遇されているように思えば、不満を述べる。まだCS進出の可能性がある中で、『1番・筒香、2番・ソト』は批判の対象になることはわかっていたはず。それでも、外野の声を恐れずに実行する。ラミレス監督は信念を持ってブレずに采配する特質を持っている」
ラミレス監督は、方々から疑問視されている『8番・投手』の打順を今年、一度も変更していない。
「『8番・投手』で潰えるチャンスも多々見られる。9番に1番に繋げる打者、チャンスに強い打者を置くと言いながら、打率1割台の捕手を据える試合もあり、あまりに『8番・投手』という形式にこだわり過ぎだと思います。ただ、信念を押し通していることは伝わって来る。『1番・筒香、2番・ソト』にしても、データを元にした自分なりの根拠があるからこその采配でしょう」
勝てば官軍のプロ野球界。昨年のポストシーズンではCSを勝ち上がり、日本シリーズに進出して“ラミレス・マジック”と称えられた。自力3位のなくなったDeNAが徳俵から巻き返すか。