『幕末太陽傳』で佐平次を演じた伝説の元宝塚トップスター早霧せいなさんと落語コミックエッセイ『お多福来い来い』で早霧さんの舞台を観に行ったことを描いた宝塚大好き漫画家・細川貂々さんが初対談。その話は、内面性にまで迫っていくものに…! 現在早霧さんは舞台『るろうに剣心』に出演中。
早霧:伺いたかったのが、貂々さんが『お多福来い来い』の中で描いていらっしゃる「自分が大キライだった」というのは…?
貂々:私、すごいネガティブ思考だったんです。自分のことを『ネガティブ思考クイーン』と言ってるぐらい、何でも後ろ向きに考える人だったので、生きるのがつらくて。何かやろうとしても、どうせ無理だし、と思ってしまって前に進めませんでした。何とかしたいなって、ずうっと思ってきたんですが、そんなとき落語に出会って、ようやく前向きになれたという感じなんです。
早霧:すごーい! 私はネガティブ思考クイーンですよ、今でも。
貂々:えーっ、そうなんですか!?
早霧:はい。家では泣いてますもん(笑い)。だから、貂々さんがいつどう変わられたのか知りたいです。
貂々:ええと…わかってきたのは、精神科医の水島広子先生にお会いして、「あなたは自分のことをキライだとか言って、自分をいじめている。もっと自分に優しくしなさい」と言われたことがきっかけです。「こんな自分はダメだと思っても、それでいいんだと認めなさい」と。
でも、キライな自分を、これでいいなんて認められるわけないじゃないですか。最初からすんなり先生の言葉を理解できたわけじゃないんですけど、「それでいいと認められないと、前には進めないよ」と言われて、少しずつ認めるようになって、変わり出したんですよね。その頃に落語にも出会ったんです。
早霧:つらい時期とか大変な時期にかけてもらう言葉って、心に残るんですよね。
貂々:はい。それから、(『幕末太陽傳』に登場する)佐平次もそうですけど、落語の中に出てくる人って、みんなダメな人なんですよね。
早霧:たしかに、そうですよね。
貂々:ダメ人間だけど、みんな楽しく生きていて、周りもそれを許容しています。それに気づいてから、私の人生も落語にたとえて、『オチのある人生は楽しい』って思えるようになりましたし、自分を笑っちゃうところまで行けたら、もっと楽になるのかなって思っています。