主ながん検診には、国が推奨する公的な「集団がん検診」があるが、これまで3万人以上のがん患者を診療してきた、北海道がんセンター・名誉院長の西尾正道医師はこう指摘する。
「肺がんや胃がんなど、公的ながん検診がカバーしている5つの検診は、がん全体の半分に過ぎません。実際は肝臓や膵臓の進行がんで見つかり、亡くなっている方が多いのです。自分の命を守るには、各個人が自分のリスクを知って、それに応じた検診を受けることが必要でしょう」
欧米のがん検診では、対象年齢の上限が設定されている。高齢者には検査や治療がデメリットになる場合があるからだ。東京新宿メディカルセンター副院長・赤倉功一郎医師は、“期待余命”に合わせた検診を提案する。
「今は、とてもアクティブな75歳もいれば、他の病気で元気のない75歳もいる。だから一律に年齢で検診の上限を設定するのではなく、ご自身の“期待余命”10年以上の人は、がん検診を受ける。それ以下の人は、無理に検診を受けない、という考え方があります」
がんのリスクは人によって大きく異なる。それを無視して、単純に年齢だけで線引きをした集団がん検診など、明らかに時代遅れだ。
自分のリスク等を分析し、適切な検査を選んでもらいたい。
●取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2018年10月12・19日号