10月からスタートしたNHK連続テレビ小説『まんぷく』。初回視聴率23.8%を記録し、その後も20%を超える視聴率をキープしている。好調の要因は、ヒロインの安藤サクラ(32)を中心としたドラマの世界観にある、とコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんは指摘する。以下、木村さんが解説する。
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急展開と修羅場の連続で視聴者を翻弄した『半分、青い。』から一転、『まんぷく』は初週から温かみのある人間模様を見せたことで評判は上々。視聴者をほっこりさせるような世界観は、ヒロインの今井福子を演じる安藤サクラさんそのものと言ってもいいでしょう。
DREAMS COME TRUEの主題歌『あなたとトゥラッタッタ♪』に合わせてコミカルに歩くタイトルバックから物語のすべてに渡って、“安藤サクラワールド”全開。他の女優と比べると、美人ではないけど、愛らしい。華はないけれど、落ち着く。力みのない自然体の演技が、作品全体に安心感を醸し出しています。
安藤さん自身、「福ちゃんはいい意味で楽天家。何があってもよりパワフルに、より楽しく、いい力に変えていくことができる」と話していましたが、まさにハマリ役です。
◆「女は愛きょう」を具現化した恵比須顔
制作サイドは、そんな“安藤サクラワールド”を際立たせるべく助演俳優に、「これでもか」というほどの美男美女をそろえました。姉役に内田有紀さんと松下奈緒さん、同僚役に橋本マナミさん、親友役に松井玲奈さんと呉城久美さん。相手役に長谷川博己さん、義兄役に要潤さんと大谷亮平さん。さらに長谷川さんの役絡みで、片岡愛之助さんと桐谷健太さんも出演していますし、今後は菅田将暉さんや瀬戸康史さんの出演が予定されています。
逆に、美男美女ではないキャスティングは、スポット出演する浜野謙太さんくらいで、まさに“美男美女縛り”状態。確かに高視聴率が定着した近年の朝ドラは、「男女それぞれの視聴者に癒しをもたらす美男美女のキャスティングが必要」と言われていますが、『まんぷく』の徹底ぶりは特筆すべきものがあります。
“美男美女縛り”にした理由は、前述した温かみのある“安藤サクラワールド”を序盤から視聴者に強く印象づけるためでしょう。朝ドラでは定番の子役時代がなく、初回から安藤さんが演じていることからも、そうした意図がうかがえます。
美男美女がそろう中、安藤さんはど真ん中に入るわけですから、必然的に顔を比較されてしまいますが、それこそが狙い。常にやわらかな笑顔を絶やさない福子は、関西で言うところの「えべっさん」(七福神の恵比寿)。その恵比須顔は福の神のようであり、周囲の美男美女たちを幸せな気持ちにさせています。
一方、美男美女俳優たちが演じる役には、安藤さんのような笑顔のキャラクターはいません。「女は(美しさより)愛きょう」という言葉を具現化したようなヒロインであり、好感度が高いのは当然でしょう。
安藤さんは、これまでの出演ドラマでも、“美男美女縛り”のような状態がありました。ヒロインを務めた『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)では、岡田将生さん、松坂桃李さん、柳楽優弥さん、吉岡里帆さん、島崎遥香さん。『ショムニ』(フジテレビ系)では、江角マキコさん、ベッキーさん、本田翼さん、森カンナさん、堀内敬子さん、片瀬那奈さん、三浦翔平さん、工藤阿須加さんなど、美男美女らの中で持ち味を発揮していたのです。
◆次々に訪れる試練が女優としての見せ場に