国内

若手刑事だけが見えていた殺人事件の凶器の謎

殺人事件の凶器は意外な場所から発見

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、元刑事が明かす殺人事件の凶器についてのエピソード。

 * * *
「俺たちには見えない物が、あいつには見えていた」

 元刑事は、部下だった若手刑事のことを思い出し、そう言った。

「目をこらして見たんだが、誰の目にもそれは見えなかったんだ。だがあいつは、はっきりとその形が見えたと言ったんだよ」

 彼らが目をこらして見ていたのは、ある事件現場の近くを流れていた川の底。護岸はなだらかなコンクリートで覆われ、幅もなく水位もあまり深くないその川の川床に、凶器は埋まっていた。

 その事件とは、犯人の女が交際していた60代の男性を口論の末に殺害して切断、男性の自宅の床下収納に死体を埋めたという事件である。女は髪を茶色に染め派手な化粧で若作りをしては、年配の独り暮らしの男に声をかけ、貢がせていたという。被害者(ガイシャ)も女に声をかけられ、持っていた金や年金を貢いでいた一人だ。

 はた目に二人の交際は順調に進んでいると思われていた。ガイシャは女と一緒になるつもりだったのだ。ところがいつの間にか、ガイシャの行方がわからなる。不審に思った親戚が、何度も女に行方を尋ねてみたがはぐらかされて終わっていた。そこで警察に相談し、捜索願を出したのだ。

 元刑事は、捜索願の出されたガイシャの自宅を調べに行った。家の周囲をぐるりと見て回る。シンと静まりかえり不信な様子は何もない。ところが家の中に一歩、足を踏み入れた途端、彼は瞬間的に息を止めた。殺しの臭いが鼻をついたのだ。殺しの現場に漂う独特のあの臭いだ。

「仏の臭いというのかな。腐敗臭というだけでない一種異様な、淀んだような重苦しい臭いでね。その臭いは沈んでいるように、歩く度に足元から舞い上がってくる感じがしたんだ。台所に入ると足元に絨毯が敷いてあった。だいたい台所に絨毯なんておかしいだろう。敷かれていた絨毯をゆっくりめくると、床下収納が表れた。それを開けるとその中にさらに蓋があり、何重にもガムテープで目張りがしてあったんだ」

 臭いが漏れるのを防ぐためだ。

 元刑事は慎重にガムテープを剥がした。臭いがどんどんきつくなっていく。プラスチックの蓋は軽く、簡単に持ちあがった。中をのぞき込む。その瞬間、息をのんだ。

「中にコンクリートで固められた白骨が見えたんだ」

 すぐさま警察は交際相手の女の身柄を確保、まずはガイシャの銀行口座から金を引き出した窃盗容疑で逮捕した。

 容疑者は、口論し金を盗ったことは認めたものの、殺人に関しては完全否認を貫いた。鑑識の結果、死体が埋められていたコンクリートの中から女の髪の毛が出てきた。死体を埋めたのは間違いなくこの女だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン