国民皆保険の制度下では病院に支払う受診料は全国一律。提供される医療サービスも同じと考えがちだ。だが、実際は東日本と西日本の医療環境は厳然たる格差がある。厚生労働省によると、人口10万人あたりの医師数が最も多いのが徳島県の315.9人、次いで京都府314.9人、高知県306.0人、最も少ないのが埼玉県160.1人、次いで茨城県180.4人、千葉県189.9人となっている(「2016年医師・歯科医師・薬剤師調査」より)。
なぜ関東に医師が少ないのか。最大の要因は大学医学部が圧倒的に西日本に偏在していることだ。医療行政などを研究する医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が問題の本質に迫る。
* * *
医師不足はそのまま地域の医療レベルに直結する。競争相手が多ければ、患者の取り合いになり、サービスの質の低い医療機関は淘汰される。
福岡県久留米市のある開業医から、顧客となる患者を勧誘するためにバーに飲みに行き営業活動をすると聞いたときは本当に驚いた。患者が来るのを待つばかりの関東周辺の開業医とは大違いだ。
大学病院においても関西では京都大と大阪大が、中国地方では広島大、岡山大、山口大が、九州・沖縄では8つの国立大学医学部が競い合っている。至近距離にライバルがいることで、必然的に医療レベルは高まる。