焼酎には米、麦、いも、黒砂糖、落花生など、さまざまな種類がある。その歴史は古く、16世紀から製造がはじまり、17世紀後半には、各地で製造されていたといわれている。
その中心となってきたのが、宮崎、鹿児島、熊本南部の南九州だ。そして、焼酎王国といわれる鹿児島県を抜き、焼酎の出荷量4年連続トップに立つのが宮崎県だ。
「南九州は、火山活動が活発な地域です。過去の火山活動で降り積もった火山灰からなるシラス台地は、水はけがよすぎるため、稲作には不向きでした。しかし、中南米発祥といわれるさつまいもは、水はけのよい土地に向いた作物で、でんぷん質が多く、焼酎造りに向いていたことから、ここで、いも焼酎が造られるようになりました」
と言うのは、いも焼酎『黒霧島』などで知られる『霧島酒造』(宮崎・都城市)の企画室・梅元里菜さん。なかでも、高品質な焼酎造りには、地下にある水「霧島裂罅水(きりしまれっかすい)」の存在が大きいという。
「霧島連山に降った雨が、シラス層や火山灰の土壌に染み込み、長い年月をかけて自然にろ過され、地下深くに蓄えられたのが、名水『霧島裂罅水』です。これは、適度なミネラル分を含み、酵母菌の発酵に最適。軟水のため、まろやかでいも焼酎の仕込み水にも適しており、『黒霧島』などを造るのにも欠かせません」(梅元さん・以下同)
南九州の大地の成り立ちや霧島裂罅水ができる仕組み、さつまいものルーツなどは、同社の施設『霧島ファクトリーガーデン』内にある『霧の蔵ミュージアム』で詳しく学べるが、同施設内の『霧の蔵ブルワリー』では焼酎の試飲もできるため、都城市の観光スポットとしても人気を得ている。
「焼酎の種類によって、おすすめの飲み方は異なりますが、南九州には、数日前に焼酎を水で割り、熟成させてから飲む“前割り”という文化があります。寝かせることで、焼酎と水がより深く交わり、よりまろやかになるんですよ」
寝かせる期間は好みにより、3日~1週間と幅広いが、一晩おいただけでも味わいが深くなる。製造元を訪ね、その歴史を知ることで焼酎の味わい方も深まるようだ。
※女性セブン2018年10月25日号