相続に関する民法の規定を見直す改正案が2018年7月に成立、2019年1月以降に順次、施行されていく改正民法によって、相続の常識は大きく変わる。
妻と子が相続人となるケースでは、民法で定められた法定相続分に従うと、遺産は配偶者に2分の1、残り2分の1が子供たちの人数によって配分される。しかし、現行制度下では、法定相続分通りに遺産分割しようとすると、妻が自宅を処分せざるを得なくなるケースが少なからずあった。そうした事態を避けるため、今回の法改正で「配偶者居住権」が認められるようになった。
法定相続分として配偶者が得られる権利である「居住権」は、第三者に譲渡することはできない。所有権のように“売買”はできないので、老人ホームに入居する際に“居住権を売って頭金にする”といった選択肢を取ることはできない。
逆にいえば、一度登記した居住権が第三者によって消去されることもない。したがって、老人ホームに入居、あるいは別の場所に引っ越しても、居住権はなくならない。
“なくならない権利”といえば聞こえはいいが、居住権が残っていることで、所有権を持っている子供が不動産の売却や賃貸といった活用がやりにくくなることが考えられる。その場合、居住権を「放棄」することは可能だ。
※週刊ポスト2018年10月26日号