不正融資を繰り返していたスルガ銀行に、ついに金融庁の鉄槌が下った。金融庁は10月5日、スルガ銀行に対し6か月間の一部業務停止命令を出し、投資用不動産向けの新規融資を禁じる処置を取った。スルガ銀行は11月末までに業務改善計画書も提出しなければならない。背景にあるのは、5月に経営破綻した、女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社「スマートデイズ」などを巡る組織的な不正だ。
スルガ銀行は、スマート社などへの投資用不動産向け融資において、組織的に融資資料の改竄などを行うなどの不正融資を繰り返してきた。不動産業者が物件の賃料や入居率を改竄し、そこから弾き出した物件価格をもとに融資額を算出する不正が常態化。なかには借り手である物件オーナーの所得や貯金残高を改竄するケースもあった。そうした不正に、スルガ行員が関与または黙認したとされるケースは1000件超にのぼると報じられている。
金融庁は問題発生の要因を、「創業家支配のもと、厳しい業績プレッシャーやノルマ、叱責で営業現場を圧迫した結果、不正行為を蔓延させる企業文化が醸成された」と指摘している。創業家出身の経営トップは9月の第三者委員会の報告を受けてすでに退任しているが、創業家が関係するファミリー企業への不適切な融資も新たに指摘され、今後の調査によっては刑事事件に発展する可能性もある。投資用不動産向け融資に詳しい税理士が言う。
「投資用不動産向けの不正融資はスルガ銀行に特有の問題ではありません。他の地銀や信金でも似たような構図があるのは、何度も目にしてきました。スルガ銀行の件が発覚して以来、各行の融資の審査が厳しくなったことは事実ですが、不動産業者側もさらにズル賢くなっているので、たとえば源泉徴収票そのものの改竄から行うようなところも出てきました。融資を審査する側の金融機関の行員が積極的に関与しているケースも少なくありません」
今年8月末には、東証一部上場の不動産会社「TATERU」をめぐって融資資料の改竄による不正融資が発覚した。融資を行ったのは、TATERUが株主にも名を連ねる西京銀行だった。TATERUといえば、サッカー日本代表の本田圭佑選手を起用したCMで知られる不動産ベンチャーの新興企業。IoTを駆使したアパート経営を標榜するなど、旧態依然とした不動産業界とは一線を画する企業イメージだっただけに、不正融資のニュースは一般投資家を驚かせた。
しかし、投資用不動産に詳しい業界関係者は「この業界はどこも似たり寄ったり」と苦笑しながらこう語る。