初回、2回目ともに10%を超える視聴率を維持し好調な新月9『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)。主演を務めるのは織田裕二(50才)だ。スーツをビシッと着こなすエリート弁護士を演じる織田の姿に「脱・野暮」を見たというのはコラムニストのペリー荻野さんだ。以下、ペリーさんが解説する。
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そんなわけで見渡せば、40代、50代の主演俳優ばっかりで渋めラインナップの今期の新ドラマ。その中で注目されたのが、『SUITS/スーツ』である。その注目ポイントの第一は、1991年の『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)以来、実に27年ぶりのという織田裕二と鈴木保奈美の月9共演だった。
でもって、それが実際どうだったかといえば、なんてことなくするするとドラマは始まり、進行したのであった。だいたい、「久々の共演」とか「因縁の対決」とかいわれるものは、その直前まではすごいことのように騒がれるものの、当人たちはいたって冷静(『めざましテレビ」でインタビューを受けた2人は、27年間連絡先も知らず、今回再会して最初に交わした会話も覚えていなかった)だし、たいていは出オチのごとくすんなり本題に入れるものなのである。いい大人なんだしね。
それよりも、このドラマで浮上したのは、織田裕二の「脱・野暮」という点だ。織田が演じる甲斐正午は、ハーバード大学卒の敏腕弁護士。幸村チカ(鈴木)が代表を務める大手弁護士事務所の稼ぎ頭のひとりだが、どんな手を使っても勝つことがすべてという傲慢さもある。自分はもちろん、頭のてっぺんからつま先まで外見をピシッと決め、資格がないのにパートナーの若手弁護士として雇ったフリーターの鈴木(中島裕翔)にも、「安物のスーツは着るな」とポケットマネーで有名テーラーでの仕立て命じるようなこだわり男である。
広々とした都心のオフィス、もちろん甲斐には洗練された調度が揃う専用の部屋が用意されていて、美人の秘書(中村アン)がにっこりと出迎えてくれる。野暮のヤの字もないような環境にいる甲斐を見たら、27年前を知る人は感慨深いはずである。
織田は、ずっと「ちょっと野暮」な役がよく似合った。『東京ラブストーリー』では田舎から東京の企業に就職し、帰国子女のリカ(鈴木)とつきあいながらも高校の同級生(有森也実)との間で揺れる青年。『踊る大捜査線』(フジテレビ系)では、脱サラして念願の警察官になったものの地味な所轄署刑事、『ラストクリスマス』(フジテレビ系)では、清楚な女性かと思ったら元ヤンキーだった由季(矢田亜希子)に言いたい放題されつつ彼女を愛する事業部の主任。映画『僕の妻と結婚してください』では、余命わずかと知り、妻(吉田羊)の結婚相手を真剣に探す放送作家。みんなまっすくでいいやつだけど、ちょっと野暮。有名テーラーのスーツどころか、スーツの上からフードがついたコートを着るのもお約束みたいだった。
これまで外交官や監査役なども演じてきたが、甲斐は織田裕二の「脱・野暮宣言」のようにも見える。そのせいか、甲斐は動きも独特だ。気になるのは、ポケットに手を入れるのが好きなこと。鈴木の前でもライバル弁護士の前でもチカの前でもポケットにイン! そして難敵との交渉に出かける際にもなぜか手ぶら。だからポケットにイン! 織田裕二の新たな顔。『SUITS/スーツ』に込められた意味は深い。