亡くなった人が名義人になっている銀行口座は凍結され、お金が引き出せなくなるということはよく知られている。だが、今年7月に相続に関する民法の規定を見直す改正案が成立、来年1月以降に順次、施行されていく改正民法によって、そんな常識も変わることになりそうだ。
家計を支えていた配偶者が亡くなった場合、葬儀代や、死亡直前に入院していた病院の医療費などが支払えないといった事態が起きることもある。
口座が凍結されるのは、相続人の一部が勝手にお金を移したりするのを防ぐためだ。役所などから死亡の事実が銀行側に伝えられるのではなく、遺族が口座のある銀行に知らせるルールになっている。ゆい会計事務所・代表税理士の西津陵史氏はこう解説する。
「金融機関側にしても、名義人の死亡を知りながら口座を凍結せずに放置し、遺族の誰かが多額の現金を引き出して使ってしまったりしたら、別の遺族から損害賠償請求をされる可能性があるので、これまで凍結された口座から早い段階でお金を引き出す方法はなかった」
2016年12月には、遺産分割協議が終わるまで、遺族は故人の口座からお金を引き出せない、という最高裁判決も下されている。まこと法律事務所の弁護士・北村真一氏が解説する。
「大半の人には口座に入っている預金以外にも財産があります。全部まとめて遺産分割の話をしないといけないときに、預金が動かせる状態にあると混乱して議論が長引くので、まずすべて話し合いなさい、というのが判決の意図でしょう」