2014年に発売されたカネテツのカニカマ製品『ほぼカニ』は、そのとぼけたネーミングセンスと「※カニではありません」というキャッチコピーが注目を集め、発売以来好調な売り上げを記録している。ヒットの裏にどんな開発ストーリーがあるのか、開発担当者に話を聞いた。
『ほぼカニ』の開発が始まったのは2012年。かまぼこやちくわなどを製造するカネテツでは、おせちやおでんで練り物の需要が増える秋冬だけでなく、夏場の定番となる商品の開発をしたいと考えていた。
カニカマなら、冷たいまま食べてもおいしく、夏場でも需要がある。だったら本物そっくりのカニカマを作ろう──開発が始まった。
まずは何をおいても、本物のカニを食べること。さらには理化学的な分析もし、味や食感などについて、詳しくデータをとった。わかってきたのは、カニカマは直線上に繊維が並んでいるが、本物のカニは斜め方向など複雑に繊維が走っているということ。本物に近づけるには、それを再現しなくてはならない。そこで従来のカニカマを作る機械で切り方などの設定を変えてみた。すると、カニ特有の繊維感を出すことができたのだった。
次は、味わいの再現だ。口にした瞬間にカニの風味を強く感じる工夫をしなければならない。というのも、高級食材で、一般的にはあまり頻繁に食べることのないカニは、食べる時の期待が大きい。そのため、口に入れた直後に強い風味を感じられないと、味も感じにくくなってしまうからだ。
これらを解決すべく100回以上試作を行い、ついに『ほぼカニ』が発売された。すると間もなくして、流通業者から「ぜひ、仕入れたい」という依頼が舞い込んだ。取引先の方から依頼が来ることなど、それまでほとんどなかった。驚いた担当者が調べてみると、SNSを中心に「商品名がおもしろい」と話題になっていることがわかった。もちろん、ユニークなネーミングが好評価だったことは確かだが、それを裏付ける、“ほぼカニにしか思えない”リアルな味と食感があってこその反響だった。
こうして、『ほぼカニ』は当初年間の売上目標だった180万パックの2倍以上もの売り上げを達成した。通常、練り物製品の主な購買層は60代以上が占めるが、20~30代の若年層にも受け入れられた。味や食感の高い再現度が、一度口にした人たちを驚嘆させ、リピーターが増える結果にもつながった。
その後は2015年に『ほぼホタテ』を発売し、以来毎年、『ほぼエビフライ』、『ほぼカキフライ』、そして今年9月には『ほぼタラバガニ』を発売。『ほぼうなぎ』は、今年6月に通販で数量限定で発売したのみだったが、わずか1週間で完売してしまった。
また、『ほぼシリーズ』は実際のカニやカキのエキスを使用しているが、『ほぼエビフライ』は、エビエキスは使わずにエビの味を再現。エビのアレルギーをもつ消費者からは「まさか自分がエビを食べられるとは」という喜びの声も届いた。
今後も“食卓でおなじみだが、高級で手が出にくい味”を中心に商品を企画中だという。
※女性セブン2018年11月1日号