英雄色を好む、という。もちろん、どういう風に好むかでその人物への評価も変わってくるものだろう。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
涙ぐましい苦しい言い訳というべきか、それとも子供だましのあきれた口実と言うべきか。17日、内モンゴル自治区初で報じられたニュースに、思わず苦笑した読者は少なくなかったはずだ。
同日、『観察者ネット』にアップされた記事のタイトルは、こうだ。
〈二つの職務を解かれた副局長 “代理母”の名を借りて愛人を囲い三人の婚外子を生ませる〉
規律違反を問われて処分を下されたのは内モンゴル自治区包頭市林業局の元副局長、李福荣である。
この話、中国の田舎の幹部にありがちな無知の所産と思われたが、さにあらず。なんと李は博士号も取得した技術者で、中国の定義では高級知識人に分類される人物だ。学歴や肩書だけではなく、仕事でも多くの実績を残している。
かつて、「市郊外はアフリカのようだ」と揶揄されていた包頭の道をきっちり整備し、270キロメートルの道を甦らせた人物として紹介されたこともあった。だが、その裏では“代理母”という名目で複数の若い女性と金銭による契約を結び、実質的な愛人として囲っていたのだ。
そしてタイトルにあるように、そのうちの一人とは非常に長期間にわたり関係を続け、ついには三人の子供を産ませていたというのだ。事実を並べてみれば、単に愛人を囲っていたという以外の事実は見つからない。まあ、「代理母」というのは、言ってみただけということか。