グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
料理評論家で服部栄養専門学校の服部幸應氏(72)が持ってきたのは、父親から譲り受けた魯山人の皿だった──。
服部学園の創立者である父親の道政氏が数多く所有する器の中で、最も愛した皿。保管する木箱には、北大路魯山人自らが筆を入れた“魯山人の皿”の文字が記されている貴重な品である。
「遠い昔になりますが、この皿に盛り付けている父の姿が強く記憶に残っています。どんな料理も映える不思議な皿。父がなぜ惹かれたのかは、魯山人の世界観を知るほどに理解できます」
服部氏は2歳から包丁を持たされ、物心ついた時から食の世界に身を置いてきた。食育の普及にも力を注ぎ、食育基本法まで成立させたその功績は大きい。
「私的な終活はまだ考えが及びませんが、仕事ではライフワークである食育に生涯を捧げます」