天皇陛下は多くを語られない。その発言は非常に重く、また、制約も多い。その代わり、年を重ねてますます活発に「旅」に出かけられる──。
歴史探訪家で文筆家の竹内正浩さんが、『旅する天皇 平成30年間の旅の記録と秘話』(小学館刊)を上梓した。「旅する天皇」にはハプニングもつきものだ。平成10年の長野パラリンピックで起きたハプニングについて、竹内さんとともに振り返る。
■平成10年(1998年)3月11、12日 長野パラリンピック
1998年2月の長野五輪では、開通から間もない長野新幹線で現地入りされ、冬季競技を熱心に観戦された。
翌3月に開催された長野パラリンピックの大会7日目には思わぬハプニングが起きた。両陛下が観戦されるなか、約6500人の観衆が詰めかけたスタンドで巨大なウエーブが発生したのだ。
「その時、ロイヤルボックスで盛んに拍手をしていた美智子さまが、着席したまま両手を高く上げてウエーブに加わられました。観客は思いもしないハプニングに色めきだち、その後もウエーブが何周も会場を回りました」(竹内さん)
美智子さまはこの「波」について後にこう述べられた。
〈不思議な波が、私たちの少し前で何回かとまり、左手の子どもたちが、心配そうにこちらを見ておりましたので、どうかしてこれをつなげなければと思い、陛下のお許しを頂いて加わりました〉
竹内さんが感心して言う。
「確かに映像を見ると、美智子さまが目で合図をして天皇陛下の承諾を得ています。全世界が見ているなか、咄嗟の判断をされた両陛下にはただただ感嘆するばかりです」
2020年の東京五輪、新しい天皇皇后両陛下はウエーブに加わられるだろうか。
※女性セブン2018年11月8日号