「子供が野菜の苦味や酸味などを嫌がるのは当たり前だと思ってください。これは、腐ったものや毒のある食物を避けるために備わった本能的なものですが、やり方次第で必ず克服できます」
と語るのは、栄養士の松丸奨(すすむ)さん(35才)。松丸さんは、病院に勤務し、病院食の献立作成や栄養管理に携わった後、2008年から小学校に勤務。働き始めた当初は、子供たちの食べ残しの多さにショックを受けたという。
「本来、食は楽しいもので、食卓を囲む時間は何よりも楽しいものだと思います。なのに最近は、共働きの増加とともに、ファストフードやレトルトで食事を簡易に済ませるご家庭が増えている。そのため、子供たちが“味覚の経験”を積む機会が減り、好き嫌いが増えていると思います。子供は舌全体の経験値が少なく、味の許容範囲が狭いので、少しずつ経験値を上げてあげるといいでしょう」(松丸さん。以下、「」内同)
松丸さんは、子供が苦手な食材に、子供が好む味付けや食感をプラスしていくことから始めた。例えば、子供が嫌う大豆やレンズ豆はトマトケチャップで味付けしてチリコンカーンにしたり、カレーに入れたりすることによって、喜んで食してくれるようになったという。また、大豆に片栗粉をまぶし、油で揚げてカリカリの食感にし、角切りにして素揚げしたじゃがいも、塩、青のりと混ぜた青のりポテトビーンズは、給食でも大人気だった。
ただし、苦手な食材の特徴を完全に消してしまうのは避けた方がいいという。
「例えば、ピーマンの苦味やセロリの独特なにおいは多少残し、子供に苦味やにおいをきちんと感じてもらう。焦らず、ひと口・ひとなめずつ、1年くらいかけてもいいから、無理強いせず、納得して少しずつ少しずつ食べられるようにしてあげると、子供たちは達成感と喜びを実感できます」
ちなみに、苦手な野菜をペースト状にしてハンバーグに練り込み、知らないうちに食べさせるような方法は本当の解決にならず、子供に“だまされた”と思わせてしまうため逆効果。子供が口に入れても違和感のないサイズに野菜を切ってあげること、できるだけ野菜の原形が目に見えて、口内でおいしさを感じられるようにすることも大切だ。