同時代に生きる者がバブルかそうでないかを判断するのは難しい。中国の不動産をめぐっても論争がある。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国の住宅需要はまだまだ伸びる──。こんな強気な予測が出されて、都市部に住む人々の間で話題となっている。しかも、それが専門家による予測だというから注目度も高い。噂の主は住宅建設部住房政策専門家委員会の副主任で全国不動産商会聯盟の顧雲昌主席である。
だが、そもそも都市部における不動産価格は中国の人々の収入に対して高過ぎて手が出ないといわれていて、そこに若者の怒りが向けられているといわれる。この不満は習近平政権にとっても一つのアキレス腱だとさえされるのだ。北京のジャーナリストが語る。
「中国の不動産をめぐるバブルか否かの論争は、この人々の収入と不動産価格の大きな隔たりこそがバブルであり、危険なシグナルとされてきました。一方、不動産価格に対して賃貸の価格も同じように上昇している点をとらえて問題ないとするのがバブルの否定派でした。
そして問題は、いま中国で不動産王といわれる人物でさえ、なぜいつまでも不動産価格が上がり続けているのかわからないという状況になっていることなのです」
つまり、なぜ上がり続けるのかわからないまま上がっていることが問題だという。顧主任の発言は、そうした空気の中で飛び出したからこそ大きな注目を浴びたということなのだ。
さて、では顧主任はなぜ中国の住宅需要は今後も伸び続けるという見通しを立てたのだろうか。根拠の一つはこれまでに供給された住宅の一人当たりの面積である。
現在、中国で建設された住宅は、一人当たり約1.1戸で、その面積は一人当たり約30平米から40平米だという。この一人当たりの面積は、先進国の基準に当てはめて比べると、だいたい25%から30%ほど狭いというのだ。つまり、それがそのまま伸びしろだという考え方だ。
また、もう一つの視点は都市化の遅れである。中国の都市化率は現在約42%。これを先進国並みに70%程度にまで引き上げると考えれば、今後も都市部での住宅需要は増え続けるというのだ。未来の予想はともかく、いまでも中国の不動産価格が上がり続けている一つの原因を照らしていることは間違いないのだろう。