油圧機器メーカーのKYBが、国の認定などに適合しない免震装置を出荷していた問題は、今後もさまざまな建物に“激震”を与えそうだ。データ改ざんの疑いがあるのは、公表された官公庁舎や東京スカイツリー、五輪施設といった大型施設のみならず、高層マンションなど一般の住居にも多数及んでいるとみられるからだ。その影響はどこまで広がるのか──。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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KYBという会社による免震・制振ダンパーのデータ改ざんが大きな問題になっているが、国土交通省はいつもの通り“火消し”に回っている。
国交省のホームページでは「震度6強から7程度の地震に対して倒壊するおそれはないとの見解が第三者機関から得られている」という表現も見られる。「だからみなさん、パニックにならないでね」という意図がいかにも透けて見える。これは過去の東洋ゴムや六会コンクリートの事件の時と同じスタンス。建築業界で消費者を巻き込む不都合な事件が起きた時における国交省のお決まりの対応だ。
免震構造に使用されている制振ダンパーというのはそもそも建物を支える役目ではなく、免震装置である積層ゴムによって軽減された揺れを終息させるための役割を担う。したがって2015年の3月に発覚した東洋ゴムによる免震ゴムの性能データ偽装事件と比べれば、さほど深刻ではない。国交省の言うように「倒壊するおそれはない」という見解も、あながち先走っているとは言えない。
しかし、本来得られるべき国土交通大臣認定の基準値を満たしていないのも事実だ。そこから深刻な問題が生じる。KYBは、数値を改ざんして出荷したすべての製品を交換すると表明している。それは当然だろう。