女性セブンの連載「お墓、どうしますか?」「お墓、どこにしますか?」に加筆修正を加えた単行本『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』が刊行になったのを記念し、著者の井上理津子さんと、お墓を題材にした小説『一緒にお墓に入ろう』を著した作家・江上剛さんが対談を行った。
江上:やっぱりお墓というのは檀家制度で「家」と結びついてる。ぼくらのように田舎から出てきて東京に住みついた者にとっては、そういったお墓をめぐるシステムは非合理な上、ひどく煩わしい。その煩わしさから逃れたいというのが、お墓のいろんな志向の変化にもつながっているんじゃないですかね。
井上:そうだと思います。
江上:同じようなことをまた子供にさせたくない。
井上:子供に迷惑をかけたくないから、自分の代でケリをつけたい。
江上:それで散骨だったり、樹木葬だったりと、“石いらず”の方向に発想がいく。高倉健の『あなたへ』という映画があったじゃないですか。最後、散骨でした。
井上:海への散骨が映画で描かれた最初ですよね。私はこの本で遺族のかたがたが乗った船に同乗して、海洋散骨の現場も取材させてもらいました。失礼な言い方ですが、取材前は安易というか、カジュアルな気持ちで散骨してらっしゃるんじゃないかなって想像してたんです。
でも、話をうかがうと、「10年考えた末に散骨を選びました」と熟慮の末の選択のかたもいらっしゃいましたね。結局「お墓は誰のためのもの?」と聞かれたら、江上さんはどうお答えになりますか?
江上:昔は家のためだったんだろうけど、これから先は、結婚しないとか、結婚してても子供がないとか、そういう単身者のかたがたが増えていくことを考えると、個人のものになっていくんじゃないでしょうかね。
井上:私は今、過渡期なのかなと思うんです。過渡期といっても、年代や世代ばかりじゃなく、同時代を生きている夫婦間でズレている。例えばここにご夫婦がいるとして、男性の方は一家で入りたい派が多いけれども、女性の方はお墓までは遠慮したいわ、みたいな人が結構います。
江上:そうでしょうね。ぼくもこの本に書きましたけど、婚家と縁を絶つ死後離婚とかもありますからね。
井上:戦後教育を受けた女性たちが、「そもそもお墓は何で“家”単位なの?」と疑問を持ち始めたのが1990年頃です。その後、団塊世代の女性たちが意見を表明し始めたのに呼応して、跡継ぎを必要としない永代供養墓というのも増えてきたみたいで、今は樹木葬の敷地の一画に、女性専用の共同墓も登場しています。生前予約料を入れて合計10万円以内で入れるところもあるんですよ。
江上:それは格安ですね。