オプジーボやキイトルーダといったがん免疫治療薬による“第4の治療法”に注目が集まる中、これまでがん治療において第一選択肢とされていた「外科手術」に対する医学界の見方が変わりつつある。
近年、複数の研究機関が「がんの部位・種類によっては切らないほうがいい」という報告をしている。海外の医学情報に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「これまで最も効果的な選択肢とされてきた外科手術は、一方で体への負担や術後のQOL(生活の質)の低下などのデメリットが問題視されていた。
そのため『外科手術とそれ以外の治療で生存率やQOLはどう変化するか』といった研究が盛んに行なわれるようになってきている」
◆「監視」という治療法
代表的なものが、60歳以上の患者が9割以上といわれる前立腺がんだ。がんに関する著作が多い新潟大学名誉教授の岡田正彦医師が解説する。
「2012年に米ワシントン大学が発表した研究では、別の病気で亡くなった60~79歳の男性のうち、7割から前立腺がんが見つかったとしています。つまり、本人が知らないうちに前立腺がんになっていても、それが死因とならずに一生を終えるケースが多いのです」