芸能

好調続く『まんぷく』 『半分、青い。』との決定的な違い

安藤サクラと長谷川博己の夫婦役も話題に

 20%を超える高視聴率をキープしているNHKの連続テレビ小説『まんぷく』。前クールの朝ドラ『半分、青い。』も好調のまま放送を終えたが、『半分、青い。』とはどこに違いがあるのか? コラムニストのペリー荻野さんが解説する。

 * * *
『まんぷく』がスタートして1か月。このドラマを見るたびになんだかホッとしている方も多いのではないだろうか?
 
 ホッとする要因の第一は、やはり、主人公のキャラクターである。早くに父を亡くした三姉妹の三女として育った福子(安藤サクラ)は、母(松坂慶子)の反対にもめげず、変わり者の発明家・萬平(長谷川博己)と結婚。戦時の困難をなんとか乗り切り、復興をめざす大阪で新しい生活を始めたばかりである。

 大好きな姉(内田有紀)を結核で亡くしたり、萬平が無実の罪で憲兵に引っ張られて暴行されたり、家が全焼したり、たった1カ月でこんなに大変な展開が続いたわけだが、どんなに厳しい状況でも、安藤サクラのおたふくフェイスに救われる。泣いても笑っても、「萬平さんが好き」「萬平さんは人を幸せにできると人」という気持ちを全身で表現する福子にホッとできるのである。

 思えば、この前の朝ドラ『半分、青い。』は、見る人をホッとさせないことで、視聴者を惹きつけたドラマであった。主人公は、どう考えてもお似合いの幼なじみのプロポーズを断り、漫画家目指したかと思えば、意外な人物と結婚、母となって落ち着くかと思いきや、離婚して故郷に帰り、さらには起業する。ヒロイン鈴愛(永野芽郁)をはじめ、登場人物たちは常にぐらぐらと不安定で気になる存在。再び巡り合った彼ともどうなるのか?とドキドキさせる。さすが北川悦吏子作品だと思ったが、心の底で「そろそろホッとさせてくれ~」と願ってしまったのも事実。

 さらにヒロインの言語感覚もホッとさせる要因だということもよくわかってきた。福子はホテルのフロント勤務もしていて、話し言葉は比較的ゆっくりの関西弁。萬平がかつて福子をお茶に誘った際に、彼女のおなかがぐーっと鳴った話をすると、「思い出したくないけど~」と目じりを下げて照れまくる。ごった返す市場のラーメン屋台で、麺とスープだけの一杯のラーメンをふたりで分け合うときには、「萬平さんから、どうぞ」とにっこりする。

 声のトーンは高く、おっとりとゆっくりしているのが特徴だ。鈴愛の声が全体に低めで、離婚を言い出した夫に「死んでくれ」と言うなど、言葉がぶっきらぼうだったことを思うと、やはり対照的だ。ヒロインのこのぶっきらぼうさに共感できるか否かで、ドラマに対する好みは分かれたはず。その意味でも挑戦的朝ドラだったのだ。

『まんぷく』は、インスタントラーメンを発明した安藤百福夫妻がモデルだということは初めからわかっていて、萬平は失敗を繰り返すものの、着地点が見える安心感はある。恋愛要素はほぼゼロだし、ハラハラしない、おとなばっかりのドラマともいえる。しかし、挑戦的でない分、のんびりとラーメンの湯気も楽しめるというものだ。寒いシーズンには、こういうドラマが有難い。『まんぷく』が高視聴率なのも、うなずける。

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン