習近平政府の締め付けは留まるところを知らない。高官たちの汚職取締りに成果をあげた現在、その矛先はIT業界や芸能界に向かおうとしている。IT長者のジャック・マー氏と女優ファン・ビンビン。世界的にも名高い二人に差し迫る危機について、中国政府が最も恐れる男・郭文貴氏がすべて明かす。
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やあ、私が郭文貴だ。会議帰りのプライベートジェットの機上より失礼する。今回は最近の中国の企業界と芸能界における衝撃的な事件の実態について、日本のみなさんにお伝えしたい。
まず、言及したいのは今年9月、中国IT最大手アリババのジャック・マー(馬雲)会長が突然表明した「引退宣言」だ。世間ではこの発言に戸惑う反応も多いが、私に言わせれば彼の事情はわかる。
まず前提として、中国のすべての私営企業は現体制下の官僚資本の代理人だという事実を確認しておきたい。中国国内におけるすべてのカネは、たとえ1人民元であれクリーンなものは存在しない。むろん、企業が活動するうえでの公平な市場も存在しない。
ジャックのアリババをはじめ、(IT大手の)バイドゥ、テンセント、京東といった中国国内の独占的大企業は、いずれも権力に守られて発展してきた。ジャックにせよ、ライバルのポニー・マー(テンセントCEO)との戦いのために、党の常務委員(最高幹部層)や過去の総書記の家族を後ろ盾として強くなってきたのだ。アリババが巨万の富を築き、国内市場を壟断できたのは、党官僚体制との密接な関係の産物にほかならない。