《病気は罹ってから治す》──これまでの医療は、患者に明らかな症状が現われるまでは「経過観察」し、体に不調が現われてから治療を行なうことが多かった。医師も患者も「薬を飲んだり手術を受けたりすれば、病気が治る」と考えていたからだ。
だが、症状を薬で抑えようとすれば、進行しているほど服用する量は増え、手術による体の負担も増えてしまう──これが世界的に問題視されている。新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医師がこう話す。
「米国の研究では、『薬の副作用』で毎年10万6000人が命を落としていると推計されています。また、『本当はやらなくてもよかった手術』のせいで年1万2000人が亡くなるとの報告もある。病気を治すための手術や薬が、患者の命を脅かす“リスク”になってしまっているのです」
そこで始まったのが、「超・早期発見主義」への一大転換だ。病気は罹ってからの時間が長いほど“治療のリスク”が増す。ならば、超早期に発見して可能な限り治療開始を早めることで、リスクを減らそうという考え方である。
それを支えるのが最新の検査法と、病気を「見つける名医」の“神業”だ。詳細は後述するが、「大腸がん」は「ステージI(大腸の組織にがんが到達している状態)」よりもさらに早期であり従来の検査では捉えることが難しかった「ステージ0(がんが表面の粘膜にとどまっており、組織まで到達していない状態)」で発見できるようになったことで、ほぼ100%治るようになった。
がんに限った話ではない。最新検査によって、通常の検査よりも数か月から数年早く発見できたり、発見精度がこれまでより飛躍的に向上している。患者は、手術を受けたり薬を飲み続けたりすることによる肉体的・精神的な負担や、高額な医療費への不安から解放される。