病気をいち早く治療するには、いま感じている「痛み」の種類を知ることが大切だ。都内在住のA氏(75)は、ある時から腰に鈍い痛みを感じるようになった。
当初は「ただの腰痛で、年のせいだろう」と思い、整形外科を受診して経過観察に留めていたが、1週間以上経っても鈍い痛みは治まらない。
家族の勧めで総合診療クリニックを訪れ、CTの精密検査をすると、腹部に破裂寸前の腹部大動脈瘤が見つかった。緊急手術を行ない、一命は取り留めたものの、破裂すれば命にかかわる深刻な病気だった。
A氏は、幸いにして事なきを得た。しかし、A氏のように、患者側からは“よくある痛み”なのか“深刻な疾患に繋がる痛み”なのかの判断が難しいケースが存在する。
最悪の事態に陥る前に、医師が適切に診断する材料となるのが、「痛みの表現方法」だ。きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師が指摘する。
「例えばA氏が患った腹部大動脈瘤の場合、“腰から脇腹にかけての深いところがジーンと痛む”という表現をする患者さんが多い。“ジーン”や“ズーン”という鈍痛の表現により、痛みの原因となる異変が体内の深い場所で生じていて、内臓に原因があるのではと考えられるのです」
主観的に「すごく痛い」とする表現よりも、擬態語で医師に伝えたほうが、「疾患の深刻度」を診断しやすくなるだけでなく、「治療法」も把握しやすくなる。
専門医への取材をもとに、「頭・肩・腰・膝」の4部位で発生する痛みについて、痛みのレベル別に治療法の一覧表を作成した。