11月4日(日本時間5日)に閉幕したフィギュアスケートGPシリーズ「フィンランド大会」。羽生結弦(23才)はショートで106.69点、フリーで190.43点、総合得点は297.12点を獲得し優勝を飾った。結果的に、すべてが今季のルール改正後の世界最高得点だった。
そんな羽生がフリーの演技を披露する4番前、緊張した面持ちで滑り出した17才の少年がいた。どことなく羽生に雰囲気が似ている。「韓国のユヅ」との異名を持つ、男子フィギュアスケート選手、チャ・ジュンファンだ。
2人の出会いは3年前、ジュンファンは羽生のコーチであるブライアン・オーサー氏から指導を受けたいと、自ら志願し、韓国から練習拠点のあるカナダのトロントに渡ったのだ。
今シーズンの2人の初戦となった、9月の「オータムクラシック」。羽生とジュンファンはワンツーフィニッシュを決めた。そんな羽生とジュンファンの関係性を物語るエピソードがある。
オータムクラシック終了から2日後、練習拠点であるトロントでささやかなパーティーが開かれた。ジュンファンの母親が息子の銀メダル獲得を祝って催した宴だった。
その時、会場にふらりと現れた羽生はパーティーの主役であるジュンファンに向かって、「散々な演技だったぼくに次いで、きみは2位だった(笑い)」と冗談めかして囁いたという。それにジュンファンが恐縮し、「あなたには絶対に勝てません」とつぶやくと、羽生はこう告げたという。
「シニアに上がった時、ぼくはすべての選手を尊敬していた。中でも、一番強い選手の写真を持っていた。彼らに勝ちたかったから。ジュンファンもぼくに、同じことをするべきだと思う。きみはぼくに勝たなくちゃならない。よく覚えておいて。今回のきみのように大会で2位に終わるより最悪なことが1つある。ぼくが(オータムクラシックで)やったように、酷い演技で1位になること」
そう言い終えると、羽生はその場を立ち去ったという。
「現役で競技をしていると、下からつきあげるように成長してくる選手に教えたり目をかけたりするのは難しい。でも羽生の場合は、そんな勢いのある若手の登場を楽しみにしていたところがありました」(スポーツライター)
しかし、ジュンファンはあくまで羽生を気にするそぶりを見せない。今年2月の平昌五輪の直前、韓国メディアに対し、ジュンファンは羽生と比較されることに対し、こう語っている。