虐待の実態と、抑止力ともなるべき法整備にはまだまだ乖離があると言わざるを得ない。構図は中国でも同様だ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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子供を虐待する親のニュースは、日本でも頻繁に報じられる。親しか頼ることのできない無力な子供に「教育」と称して殴打し、不当な罰を与えるのは、実の親の場合もあるが、目立つのは実母の交際相手や再婚相手が加害者となるケースだ。
親子とはいえ血がつながっていないのだから、子育てにかかる大きなエネルギーを考えれば、子供の存在を疎ましく感じることは当初から警戒しなければならないことなのかもしれない。
さて、今回、中国で大きな話題となったのは継母による7歳の児童への虐待だ。10月末から11月の頭にかけて多くのメディアが大々的に報じた。
その一つ、『中国新聞網』が10月31日付で報じた記事の見出しは、〈7歳の男児が継母による1年7ヵ月もの長き虐待により植物人間に 継母への判決は16年〉である。
10月30日に陝西省渭南市人民法院が下した判決を受けての報道だ。加害者が継母というのは、男親が両親と結託して妻に親権を渡さないという中国の事情が影響している。
法廷で明らかにされた男児への虐待は、長時間立たせたり、跪かせることに始まり、電気コードで縛りつけたり竹の棒で殴打するというもので、いずれも「教育」の一環という説明だった。
虐待の発覚は、男児がバスルームで2回転び、頭を打ち付けたということだった。そして最終的に男児はタイトルにあるような重症となった。
加害者の継母は、法廷ではほとんど何も話そうとしなかったが、立たせたり跪かせるといった行為も20分程度だとし、殴打も激しくしたことはないと主張した。だが、病院に搬送された当時、男児の頭蓋骨は75%が損傷し、両目もともに網膜剥離状態であったことの説明を求められると口を閉ざした。また男児が長期間にわたり極度の栄養失調状態であったことについても明確な答えはなかったのである。
2017年11月14日付『法制日報』では、年々増加する児童虐待に対する法整備の必要性を特集で伝えているが、そのなかで中国には独立した「児童虐待罪がない」として早期の制定を呼び掛けている。