NHK E テレ『きょうの料理』でのおなじみ、93才の現役日本料理研究家“ばぁば”こと鈴木登紀子さんが、「これだけは遺しておきたい」と日本料理に関するちょっとしたテクニックを紹介。今回は“粟麩”に関するお話です。
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かれこれ50年近く続いておりますばぁばのお料理教室では、毎月その季節ならではのお料理を、その季節にふさわしい器で味わっていただいております。
毎年、多少お献立をアレンジしたり、味つけを塩梅することはあるものの、巡る季節は変わりませんから、使用するお魚やお野菜もほぼ同じ。「10月は土瓶蒸しね」「11月と12月はおせちね」と、毎年恒例のお料理を楽しみに、何年、何十年もお教室に通ってくださっている生徒さんも多いのです。
どのお献立も毎年喜んでいただいておりますが、時代、世代を問わずにみなさんが「おいしい」とうっとりなさるのが「粟麩」を使ったお料理です。
粟麩は生のお麩に粟を混ぜて蒸し上げたもので、しっとり、もっちりとした食感が特徴です。
それではそもそもお麩は何かといいますと、小麦の植物性たんぱく質、グルテンで作ったもので、生麩(蒸し麩ともいいます)、焼き麩、揚げ麩、乾燥麩があります。
生麩や粟麩は生ものですから、どこのスーパーでも手に入るというものではありませんが、焼き麩や乾燥麩は長期保存がききますから、ゆば、凍り豆腐(高野豆腐)、干ししいたけと並び、“乾物四天王”として普及するようになったそうです。私も主婦だったころは、パパのお給料日前には、ずいぶんと助けられたものでした。
◆春菊ともみじおろしを添えて。くれぐれもお出しは熱々を
さて、粟麩に戻りましょう。お教室では、お野菜と炊き合わせてお出しすることが多いのですが、今回は、エリンギをお供に、簡単で失敗もない揚げだしに仕立てました。粟麩のもちっとした食感と、エリンギのシコシコとした歯ざわりと芳香が楽しめる秋のお椀。彩りに春菊、そしてもみじおろしを添えます。
おだしは必ず熱々をかけてくださいね。しみじみとおいしい晩秋の一品、お客さまの酒肴にもたいそう喜ばれますよ。ぜひ、お試しあれ。
■『粟麩とエリンギの揚げだし』の作り方(2~3人分)
【1】粟麩1本は長さを9等分する。エリンギ1本は洗わずに、かたく絞った布巾やキッチンペーパーで拭いて、縦4つ割りにして横に3等分する。
【2】春菊3株はさっとゆでて冷水に取り、水気を絞って3cm長さに切る。
【3】中温に熱した油で粟麩とエリンギを揚げ、油抜きする。
【4】小鍋にだし1カップを煮立て、みりん大さじ2、薄口しょうゆ大さじ1を加えてかけつゆを作る。
【5】器に粟麩とエリンギを盛り、春菊ともみじおろし適量を添える。かけ汁を器の縁から静かにかける。
※女性セブン2018年11月22日号