女優の樹木希林さん(享年75)が2018年9月に亡くなってから、各方面から追悼とともに思い出や彼女の魅力を語る言葉があがり続けている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師(70)も、「がん」についての対談をきっかけに交流した思い出から、樹木さんのユニークで強い生き方について振り返った。
* * *
10年以上前、樹木希林さんと何度か、がんについて対談したことがある。ぼくのどこを気に入ってくれたのだろうか、しばらくして、突然、樹木さんから電話がかかってきた。何事かと身構えると、ご自宅に誘われた。約束の時間を待っていると、自分で車を運転して、迎えに来てくれた。
マネージャーはおらず、仕事のオファーはファクスで、早いもの順。ギャラの交渉も自分でする。運転手はいないから、自分で車を運転していく。このスタイルは、亡くなるまで続いた。
ご自宅に通されて驚いた。コンクリート打ちっぱなしのモダンな造り。味のある家具がすっきりと配置されていた。物は選び抜かれたものだけ。大切なものは、洋服でも着物でも、その命が尽きるまで使い続ける。
むだなものを持たない生き方をするために、プレゼントもお土産ももらわないようにしていた。そのまま宅配便でお返ししてしまうこともあるというから、かなりの徹底ぶりだ。