曲がやむ前から、観客はスタンディングオベーション。得点を見るまでもなく、誰もが「超新星」の誕生を確信した瞬間だった。
11月9~11日に行われたフィギュアスケートGPシリーズ・NHK杯で、16才の紀平梨花が優勝を遂げた。シニアデビュー戦でのGPシリーズ優勝は、日本人初の偉業。
ショートプログラムではトリプルアクセルで転倒し、5位と出遅れたが、すぐに気持ちを切り替えた。その日の夜に過去のジャンプ映像を何度も見返して復習。翌朝はタイミングを修正するため、16回も跳んで確認した。執念で挑んだフリーは、コンビネーションを含む2度のトリプルアクセルを成功させ、見事に逆転。ジャンプのGOE(出来栄え点)は+3.09を叩き出し、織田信成(31才)はツイッターで《梨花ちゃん3A(トリプルアクセル)の加点男子やん!笑》と絶賛した。
浅田真央(28才)に憧れ、優勝後のインタビューでも「真央さんに近づきたい」と語った紀平。しかし、その偉業は早くも「目標の人」を超えてしまった。
衝撃的なデビューを飾ったシンデレラガール。そのルーツは約13年前にさかのぼる。
紀平は兵庫県西宮市出身で、父親がサラリーマン、母親が事務職員というごく普通の家庭に生まれた。両親は教育熱心で、紀平と4才年上の姉のために“投資”を惜しまなかった。
「お母さんは早期教育が大切だと知り、娘2人をどの幼稚園に入れるかずいぶん調べて考えたようです。梨花ちゃんはプロゴルファー・横峯さくらさん(32才)の伯父さんが提唱する『ヨコミネ式』という、運動をメインとした子育て法を取り入れた幼稚園に1才9か月の時から通っていました。その甲斐あってか、本当に梨花ちゃんは運動神経がよかった。年長組の時には毎朝園庭を2km走り、跳び箱の9段もクリア。家の前でよく逆立ちをして歩いて遊んでいたのも見ました。小中と進学した後もずば抜けていましたよ」(近隣住民)