グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
宮崎駿を支えるプロデューサーとして知られる鈴木敏夫氏(70)が持ってきたのは、自らの最新刊『南の国のカンヤダ』の主人公女性からプレゼントされたペンダントだ。
“出会ってしまった”美しいタイ人女性カンヤダを主人公に、古希を迎えた凄腕プロデューサーが初のノンフィクション小説を上梓した。タイの高僧が彫刻されたペンダントは、その彼女からの誕生日プレゼントである。
「ルールに縛られず、羨ましいほど自由。言うことなすこと宮崎駿に似ていて、実に面白い。自分の残り人生に興味はないが、カンヤダの行く末は見守りたい。僕の晩年の楽しみのひとつだね」
執筆はタイの田舎に生きる彼女を通して、昔の日本を発見する旅だったと振り返る。そして、今の息苦しい世の中を少しでも緩めるつもりで書いたとも語る。現在プロデュースするのは、引退を翻した宮崎駿監督の新作。
「おそらく最後。ジブリを愛するファンのためにも、好き放題に作ってほしい。時間制約なし、お金も使い切る。盛大に遊ぶよ」
ちなみにヒロイン像は、宮崎駿監督に「これだ!」と言わしめたカンヤダ。如何に魅惑的な女性か、お目にかかりたいものだ。
【プロフィール】すずき・としお/1948年、愛知県生まれ。スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。宮崎駿を陰で支える、ジブリ伝説誕生の立役者。『千と千尋の神隠し』では歴代最高興行収入を記録。最新刊は『南の国のカンヤダ』(小学館)。
◆撮影/渡辺達生、取材・文/スペースリーブ
◆小学館が運営する『サライ写真館』では、写真家・渡辺達生氏があなたを撮影します。詳細は公式サイトhttps://serai.jp/seraiphoto/まで。
※週刊ポスト2018年11月23日号