韓国人元徴用工4人が新日鐵住金を相手に損害賠償を求めていた裁判で、1人あたり1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じる判決が確定した。韓国では少なくとも15件の徴用工訴訟が起こされ、対象の日本企業は約70社にのぼると報じられている。さらに、韓国政府がまとめた「日本強制動員現存企業299社リスト」の企業へと訴訟が拡大する可能性もある。そうなれば、日本企業の韓国でのビジネスに大きな影響を与えかねない。
日本にとって韓国は米国、中国に次ぐ第3位の貿易相手国だ。輸出額は年間約6兆円(2017年)にのぼり、一般機械、化学製品、電気機器、鉄鋼などが主要な輸出品目だ。日韓の経済関係に詳しい相沢幸悦・埼玉学園大学経済学部教授が指摘する。
「かつて工作機械メーカーの不二越が韓国の元女子挺身隊員から未払い賃金と賠償を求めて提訴され、和解して2000万円を支払った経緯がある。当時、不二越は韓国企業に工作機械や産業用ロボットを販売しており、ビジネス上、和解を選んだという見方がありました。
299社リストの企業も韓国との取引を重視して同様の判断を迫られるところがあるかもしれない。経営者が支払いを拒否するつもりでも、経営悪化を嫌がる株主が経営者に和解を求めてくることも考えておかなければなりません」
しかも、不二越は和解後にも次々と新たな訴訟を起こされている。日本側が一歩退けば、それを突破口にして雪崩を打って攻め込んでくるのが戦時賠償訴訟の“法廷戦術”だ。そこに妥協点を探るという“大人の解決法”は存在しない。