日本人の「名字」のルーツは飛鳥時代までさかのぼるという。姓氏研究家の森岡浩さんはこう説明する。
「古代、貴族や武家は天皇から藤原氏や菅原氏、源氏など“姓”を与えられていました。しかし、平安時代になると朝廷は、藤原氏に席巻されてしまい、貴族の大半は藤原姓になりました。そのため、藤原家の嫡流と区別するため、彼らは住んでいる場所を家号として名乗るようになりました。これが名字の始まりです。また、朝廷では出世できない中下級の官僚は地方に流れ、自らの支配地を明確にするために、その地名を名字にしたのです」
地名には、その地域ではなじみがあっても、別の地域の人には珍名に思えるものが昔から存在したという。
また、名字は約10万種類あるといわれるが、日本人の全人口の約9割は、全国の名字ランキングトップ1000位内に入っていると、家紋姓氏研究家の厚緜広至(あつわたひろし)さんは言う。
「残りはほぼ珍しい名字といえます。全国で100人未満の名字は、約6万種あるという統計もあります。明治時代になると名字を名乗ることが義務に。そこで、新たな名字がたくさん生まれ、日本人の名字は多様化。現在に至ります」(厚緜さん)
【教えてくれた人】
■姓氏研究家・森岡浩さん/日本人の名字にまつわる研究を行う。『日本人のおなまえっ!』(NHK総合)に出演。https://office-morioka.com/
■家紋姓氏研究家・厚緜広至さん/
グラフィックデザイナーとして活動する一方、家紋と姓氏関連の研究家としても活動している。
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号