高齢化に伴う認知症発症は当たり前のことになりつつある。でも、親の介護を担う子世代は仕事や子育てに忙しく、更年期の不調と闘っていたりもする。頭では理解していても、親の言動にストレスが募って爆発寸前…。そこで、心理カウンセリングのプロに、迷走する親に耳を傾ける「傾聴」と、妄想にも冷静に対応できる「アンガーマネジメント」のテクニックを、実際によくある会話を例に伝授してもらった。
【教えてくれた人】
◆原千恵子さん(心理学博士・臨床心理士原心理相談室長)
◆田辺有理子さん(日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントシニアファシリテーター)
■同じ話、質問を何度も繰り返す。「ねぇ、今、何時?」
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「10時だよ。時計を見やすい場所に置いたから見てね」
「まず簡潔に返答を。認知症の場合、毎回初めてのように回答するのが原則とされますが、『何度も聞かれると疲れるよ』と穏やかに伝えるのは◎。何を繰り返し聞くか、その質問パターンから時間、予定など親が気にすることを分析。それらがわかりやすい環境を整えてあげて、注意を他に向けさせるとよいですね」(田辺さん)
■「私のお金、盗んだでしょ!?」
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「お金がないのは心配だね。一緒に探そう!」
「物盗られ妄想は、信頼する身近な人を疑い、本人は本当に盗まれたと思っています。『盗っていない』『なぜ私が盗ったと思うの?』という否定や質問から始めると収拾がつかなくなるので真偽には触れず、“不安な気持ちは受け止めたよ”を言葉に。見つかったら、『よかったね!』と共感するとなおよいでしょう」(原さん)
■火の不始末が発覚! 言い訳が始まる。「隣の奥さんが来て長話をするから…」
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「けがはなかった!? 火事にならなくて本当によかった」
「まずは親を心配する言葉から。『危ないじゃない!』など、叱咤されて追い詰められると、取り繕いをせざるを得なくなります。安全な器具の設置も考慮しましょう」(田辺さん)
「命にかかわる一大事であることは、認知症であっても共有した方がよく、『家が燃えたらみんな困ることになったね』などと表現を工夫しながら真剣に伝えましょう」(原さん)
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号