満55才で即位されてから30年間で、47都道府県全てを2度以上ご訪問された天皇陛下。皇后陛下と共にこれほど、日本や世界を旅した天皇はいない。そこで、平成最後の今こそ訪れたい両陛下の旅した宿を、『旅する天皇』(小学館)の著者でもある竹内正浩さんにナビゲートしてもらった。
長野県と山梨県に跨る南北約20kmもの連山である“八ヶ岳”は、日本百名山のひとつ。麓には高原が広がり、夏は避暑地として愛されている。標高1500m、八ヶ岳山麓に佇む『八ヶ岳高原ロッジ』は、天然木の柱や梁が美しいリゾートホテルだ。
「両陛下は2005年の夏、長野を行幸啓された際に、この年の秋にご結婚を控えられていた紀宮清子内親王(現在は黒田清子さん)と共にご宿泊されました。かつて内親王がまだ幼い頃にもご家族で八ヶ岳を訪れており、思い出深い地への再訪でした」(竹内さん)
200万坪の敷地に建つホテルは豊かな自然に包まれ、四季折々の彩りを楽しめるのも魅力のひとつ。両陛下のご案内を担当した支配人の油井雅明さんは、当時をこう語る。
「天皇陛下は樹木や草花に大変お詳しく、鮮やかなオレンジ色をした花“節黒仙翁”(ふしぐろせんのう)をご覧になったり、鳥類をご研究されていた清子さまは“カケス”の鳴き声について両陛下にご説明されたり、八ヶ岳の自然を満喫されていました。散策の途中で立ち寄った音楽堂が、通常はコンサートホールなのですが、結婚式を数日後に控え、この日は偶然バージンロードの内装になっていました。それをご覧になった両陛下は目を合わせて微笑まれ、清子さまのご結婚に思いを馳せていらしたのかもしれません」(油井さん)
親子水入らず、忘れられない思い出の旅となったはずだ。
「両陛下と清子さまは、杣添川に沿った“せせらぎの小径”を散策され、陛下は“ダケカンバの大木が見事でした”とおっしゃっていました」(油井さん)
ダケカンバは白樺とよく似たカバノキ科の落葉樹で、両手を広げるようにそびえ立つ姿に生命力を感じる。玄関を入ると、天然木の柱や梁が美しいロビーが広がる。館内は山小屋のような落ち着いた雰囲気が漂い、木の温もりに癒される。
「両陛下は地元産の信州サーモンを召し上がりました」(油井さん)
両陛下がお泊まりになったのはロイヤルスイート『714号室』。ロイヤルの名にふさわしい約100平方メートルのゆったりとした客室で、窓の向こうには壮大な八ヶ岳高原が広がる。クラシックな重厚感のある部屋で優雅なひとときを。スイートルームの宿泊プランは4万3900円~。
■八ヶ岳高原ロッジ
住所:長野県南佐久郡南牧村大字海の口2244-1
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号