実に10万種類あると言われる日本人の名字。その一方で、全国100人未満の「珍名字」は6万種類だという統計もあるという。
名字は人々の暮らしに身近なものからつけられることが多いが、たとえば職業からつけられた名字も多い。
「古くは、大和政権に仕える職業からも多く名づけられている。例えば動物を飼うのも職業で、鳥飼さんや牛飼さんが誕生しました」(姓氏研究家の森岡浩さん・以下同)
当時、朝廷直轄の土地は『屯倉』(みやけ)と呼ばれており、そこで耕作をしていた人たちを『田部』(たべ)と呼んでいた。
「屯倉は、現在の三宅、田部は田辺などにもつながっていきます。また“~部”は職業にちなむものも多い。服部も古くは機織りを担当した“服織部”(はたおりべ)が由来です。
また、地方では郡司(ぐんじ)が地元の長を務めることが多かったことから、“郡司”のほか、村を統括した“村主”という名字が誕生しました。“むらぬし”や“すぐり”などの読み方がありますが、すぐりと読むのは、古代朝鮮語に由来するという説もありますね。
ほかにも魚をとる仕事にかかわったのが“海部(あまべ・かいふ)”、矢を作ったのが“矢作”(やはぎ)です」
室町時代以降になると職業も多様化し、名字も細分化されていく。
「室町時代に栄えた金融業者は“土倉”(どそう)と呼ばれており、そこから、土倉(とくら)という名字が発生しています。
江戸時代は“~屋”と名乗る商家が増え、“~”の部分に地名を入れたり、扱う商品を入れたりしていました。
地名が入るものでは、越後屋や三河屋、伊勢屋など。明治以降、戸籍を登録する際に“屋”を“谷”に変えたところも多くありました」
ほかに、漁師や大工、石灰、鍛冶などの名字も存在する。
【教えてくれた人】
■姓氏研究家・森岡浩さん/日本人の名字にまつわる研究を行う。『日本人のおなまえっ!』(NHK総合)に出演。https://office-morioka.com/
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号