好調が伝えられながら、九州場所で初日から4連敗の後、休場した横綱・稀勢の里。完全ガチンコ場所ならではの展開といえるが、稀勢の里の現役続行を望む声は根強い。背景にあるのは、稀勢の里引退後の大相撲への危機感だ。
角界に横たわる大きな問題として「モンゴル互助会」の存在がある。
昨年の日馬富士による暴行事件をきっかけに立ち上げられた協会の第三者委員会(暴力問題再発防止検討委員会)は、10月に報告書をまとめた。そこではモンゴル人力士たちの間で所属部屋を超えた上下関係があることを問題視。下位の力士が昇進した際に、先輩力士が自動車や高級腕時計といった高価な品を贈るといった慣行があることについても、憂慮する見解を示した。
「部屋を超えた力士同士の貸し借りや上下関係が存在することは、“ガチンコ相撲”と相容れないという問題意識が示された格好です。そうしたモンゴル互助会の頂点にいるのが白鵬という状況。ただ、第三者委の報告を受けても、協会が何かを具体的に是正する方向には動いていない」(ベテラン記者)
何より、横綱の白鵬と鶴竜が揃って休場した場所のほうが盛り上がっていることは、ファンが一番よくわかっている。
「今場所は貴景勝(小結)ら新鋭に上位陣が軒並み倒される“下克上場所”。3横綱が休場した名古屋場所も、関脇の御嶽海が優勝する戦国場所になり、幕内下位の豊山や朝乃山などの若手日本人力士が活躍して館内は沸きに沸いていた」(同前)
稀勢の里が引退すれば、そうした誰が優勝するかわからない“完全ガチンコ場所”が見られなくなるかもしれないのだ。
福岡国際センター正面の土産物売り場では、成績と反比例するように、姿絵手形色紙などの稀勢の里グッズが飛ぶように売れていた。グッズを手にしたファンたちも、初場所での完全復活を祈っているはずだ。
※週刊ポスト2018年11月30日号