約10万種類もあるという日本人の名字。もともと家と家を区別するためのものであり、そのため、山や木など目印となるようなものが多く使われてきた。
「最も多いのが松。昔は高い建物がなかったため、村で高い木といえば松でした。松の木の下といえば、どのあたりか場所を特定できたのです」(姓氏研究家の森岡浩さん・以下同)
名字ランキングでは松本さんが16位に入っている。また、同じ読み方でも漢字が違うケースも。
「本家と分家を区別するため、同じ読み方でも違う漢字が使われてきました。例えば“しま”には、島、嶋、縞、嶌とさまざまな漢字があり、分家する時に、島田が嶋田や嶌田になっていきました。小鳥遊も元は高梨だったのが、分家になる際この字をあてたのが始まりです」
一方、偉い人が名づけた名前にも珍しいものが多い。
「鎌倉幕府が成立する前、平家との相州石橋山の合戦で敗れた源頼朝は、真鶴から安房(現・千葉県南部)に逃げ延びます。その途中、洲崎(現・千葉県鋸南町)で漁師に助けられ、食事を提供されます。その時、穴の開いた鍋に綿をつめて使っていたことから、頼朝はその漁師に“綿鍋”という名字を与えたとされています」
【教えてくれた人】
■姓氏研究家・森岡浩さん/日本人の名字にまつわる研究を行う。『日本人のおなまえっ!』(NHK総合)に出演。https://office-morioka.com/
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号